事始めの神様「佐麻久嶺神社」|福島県いわき市

自然植生の大杉 ~平・中山~ 森に君臨し1,200年

「鎮守の森」にはスギの大木を含め、ケヤキ、ヒノキなど何本もの"御神木"がある

 JRいわき駅から車で15分ほど南に走ると、久世原住宅団地がある。その団地の東側に、今では地区“唯一”といってもよいほどの「森」が見える。
磐城七社の一社と言われ、慶雲元年(704)鎮座・勧請の佐麻久嶺神社(小野祝平宮司)を柔らかく覆う森だ。
 境内は主として常緑広葉樹に囲まれ、それぞれ樹勢も盛んだが、これらを睥睨(へいげい)するかのように、自然植生のスギの大木は、篤(あつ)い息吹を保ちながら、森に君臨している。
 石段を昇りきると、正面に本殿があり、その右手に昨秋に完成したばかりの神楽殿。市内では最古と言われるスギの古木は、神楽殿のやや北側にそびえ立つ。
 幹回り約8m、樹高は25m以上。一部に空洞がみられるが、樹齢は1,200年余という、堂々の“強者(つわもの)”だ。
 

佐麻久嶺神社の境内に直立するいわきでも最古と言われるスギの古木。
幹からは何本もの枝も広がり、その姿はとてつもなく美しい

「この森を形成している木々は全部、御神木なんです。もちろん、あのスギもです」と、小野宮司。
 小野宮司の許可を得て囲いの中に入り、幹回りに触れてみると、その皮はさすがに厚い。手のひらをしばらく押し当てていると、気のせいばかりではないだろう、妙に温かく、「精」を授かったようだった。
 幹から出る何本もの枝は八方に広がり、一本一本の太さも相当なものだ。見上げると、最上部は一部枯れを感じさせてはいるものの、全体の姿そのものは力感があってとにかく美しい。
 ただ、上部の葉は、「年輪なんでしょうかね、若いスギたちと比べると、やはり葉はだいぶ小さくなってきたようですよ」。
 境内にはケヤキ、シイ、カヤ、シダジイ、ヒノキ、そして北限のツクバネガシなどの大樹類も林立し、御神木と呼ばれる。
同神社の御祭神は、五十猛命(イソタケルノミコト)。神話によると、五十猛命は、「国土に樹林や草花の種を蒔(ま)き、山野に緑を与えた神。同神社の「麻久」は、蒔くの意味を持つ。
 だが、時代とともに一帯も開発が進み、加えてバイパスも走り、「鎮守の森」へ運ばれる風、空気はきれいなものばかりではなくなってきた。
しかし、森は何も言わない。耐えているだけだ。

月刊りぃ~ど 2004年5月号「木霊聞く」より

佐麻久嶺神社樹木調査図公開

氏子の伊東善政さんが2016年12月から2017年3月まで、境内の樹木分布を調査、図面に起こしていただきました。
神木である大杉のほか、多様な植栽が境内敷地内に分布している様子をご覧いただけます。


クリックすると大きな画像でご覧いただけます。

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